健康寿命 元気な高齢期を長く延ばそう(7月16日付・読売社説)

健康寿命 元気な高齢期を長く延ばそう(7月16日付・読売社説)

 お年寄りになっても、できるだけ長く、健康で過ごしたいと、だれもが願っているはずだ。

 「健康寿命」を延ばしていくことが、豊かな老後につながろう。

 健康寿命とは、一生のうちで、外出や家事など日常生活を支障なく送れる期間のことだ。何歳まで元気で暮らせるかのバロメーターである。厚生労働省国民生活基礎調査を基に算出した。

 2010年時点の日本人の健康寿命は、男性が70・42歳、女性は73・62歳だ。平均寿命(男79・55歳、女86・30歳)と比較すると、男性で9・13歳、女性では12・68歳もの差が生じている。

 この差は、寝たきりになったり、治療や介護が必要になったりする期間を意味する。平均寿命と健康寿命の差が縮まれば、健康で元気なお年寄りが増える。

 その結果、医療や介護など、年々膨らむ高齢者福祉の費用を抑えられる効果も期待できる。

 厚労省は国民の健康に関する方策「健康日本21」に、健康寿命を指標の一つに盛り込んだ。平均寿命の延びを上回るペースで健康寿命を延ばすのが目標だ。

 都道府県別の健康寿命では、トップと最下位の県で男女とも約3歳の差が生じている。この地域格差の解消にも取り組む。

 若い時から食生活などに気を配り、生活習慣病を予防する意識を高めることが重要だ。地域ごとに多くの人が参加する食習慣改善の取り組みも必要である。

 健康日本21は「個人の健康は地域や職場など社会環境の影響を受ける」と捉えている。地域住民の絆が強まることで、がん検診などの受診率向上や、孤立した高齢者の減少につながる。

 そうした地域の健康づくりに一役買うことができるのも、お年寄りだ。豊かな人生経験を、地域社会の貴重な財産としても生かしてもらいたい。活躍の場を得ることは、高齢者自身にとって、一層の健康増進につながる。

 今は65歳以上となっている高齢者の年齢区分を段階的に引き上げ、定年や年金、医療、介護といった高齢者施策をそれに合わせ、再構築することも必要だろう。

 人生で「現役世代」に位置づけられる期間を長くすれば、仕事への意欲や人生設計も変わるのではないか。社会保障の支え手を増やしていかねばならない。

 政府は、生涯現役社会を目指す政策を充実させてもらいたい。それが健康寿命を着実に延ばすことにもなろう。

(2012年7月16日01時22分 読売新聞)(7月16日付・読売社説)